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中古戸建住宅の査定方法と建物価値の維持(後編)
現在おこなわれている、不動産流通市場における建物の評価(査定)と建物の本来の価値を評価する上でのよりよい評価(査定)のあるべき方向性、またその上で、建物価値を下げず、より永くお住まい頂くうえで大切なポイントについて2回に分けてお伝えします。
今回は後編です。
前編記事はこちら▶中古戸建住宅の査定方法と建物価値の維持(後編)
1.住宅の各部位毎に評価する
評価は住宅を一体として減価修正するのではなく、住宅を構成する部位は、それぞれの機能を維持することが出来る期間(耐用年数)やそれらの低下要因も異なるため、耐用年数が異なる各部位ごとにその耐用年数を求め、使用価値を減価を行い評価するものとします。
また、リフォームなどの内外装・設備の補修・入れ替えなどによる価値の回復・向上も反映させていきます。
※2
各部位 | 詳細部位 | 耐用年数 | |
基礎・躯体 | 50~100年 | ||
内外装・設備 | 外部仕上げ | 屋根材 | 30~60年 |
外壁材 | 30~40年 | ||
外部建具 | 30~40年 | ||
内装材 | 内部建具 | 30年 | |
内部仕上げ | 20~50年 | ||
台所 | 15~30年 | ||
設備 | 浴室・洗面・トイレ | 15~40年 | |
給排水・給湯設備 | 30年 |
※2 国土交通省「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針(附属データ集・附属データ参考資料:各仕様・等級による耐用年数の参考データより)
耐用年数については、個別の住宅の各部位の状態を確認の上、その機能が維持されている程度に応じて各仕様・等級によっての耐用年数を減価修正を行なうものとする。
住宅の各部位が本来要求される機能を維持しており、通常価値があるとみなされる期間(取引後も当該部位が引き続き使用されると認められる期間)を個別判定し、経過年数による減価償却ではない価格を算出し、部位別価格を算定し、合計して建物価格を算出する。
また、リフォームを行なっている場合は、価値の回復向上も反映させる。
このような、建物評価方法は、個々の住宅ごとに各部位を細分化させ、算定するもので、その住宅の本来の価値を見出す上において、耐用年数と経過年数による減価償却近い査定法に比べ、より優れていると言えます。
2.住宅の要
その上において、木造住宅は、土台・柱・梁(軸組)・基礎などの躯体と基礎が要です。
それらの機能が劣化と損傷により失われていれば、内外装・設備の状態が良くても、住宅全体としては使用価値は無くなってしまいます。
基礎については、施工状況の悪いものや、不当沈下・地震の影響などを除き、躯体が維持される程度は強度が維持されると考えられるため、躯体の機能低下が建物の寿命と大きく係って来ます。
その要因として大きいのは、木造住宅の場合、蟻害や水分の進入・結露による腐朽の発生です。
このため、木造住宅の躯体は、防蟻処理や防水、防湿を定期的に行なっていれば永く良い状態で維持することが出来ます。
不動産売買時にこれらの不具合を発見し、評価に反映したり、改修工事を行い回復するに当たっては、建物全体の検査が必要であり、現在は不動産売買時にインスペクション(建物状況調査)の実施の有無の告知が義務化されています。
しかし、インスペクションにおいても、目視可能な箇所の検査とされており、雨漏れに係る場所である屋根全体的な検査や、腐朽、蟻害の最も発生頻度の高い床下調査も、点検口からの目視可能箇所のみが一般的に行なわれている現状です。
建物の評価を正しく行うためには、屋根も含めた建物全体的な調査と、床下全域の調査が重要となってきます。ここが、抜けていることは、すなわち不動産売買時のトラブル発生の大きなリスクを残したままであると言えます。
3.まとめ
現状、不動産流通市場で中古戸建住宅の査定において、建物の評価(査定)方法は、20年~25年でほとんど無くなるいわゆる減価償却に近い方法が未だ多く、建物の個々の状態を把握し反映させることで建物本来の「使用価値」にフォーカスし評価する方法は、築30年以上のしっかり定期的にメンテナンスされた家にも建物の再評価につながり、中古住宅市場の活性化や、空き家問題にも対峙出来る取り組みでもあります。
また、そのような評価をするためには、建物細部にわたり検査し、評価に反映させることも重要であり、単にインスペクションの外部委託などではなく、不動産業に携わる私たちも建物に関する知識とスキルが求められます。
また、一般ユーザーとしては、建物の資産価値を下げず、より快適な住まいを長持ちさせるためには、建物の定期的な検査やメンテナンスが重要です。
このような方向性の実現に向け、弊社の理念であります、快適な住環境事業の創造と不動産業をリンクさせ取り組みを継続して行きます。