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コラム

COLUMN

2022.07.15
法規・法律

改正建築物省エネ法について①


 2022年6月13日に改正建築物省エネ法が国会で成立しました。脱炭素に向けた流れはあらゆる業界で進んでいますが、この住宅業界においてもその方向の大きな変革が動き出しました。今回はこれによってどのように変化していくのかを2回に分けてできる限り簡単にお伝えしたいと思います。

 

1.法改正の背景

 今回の法改正の背景には、2050年カーボンニュートラル,2030年度に2013年度比での温室効果ガス46%排出削減という、国の掲げた大きな目標の実現のためということがあります。住宅産業においてもその目標実現のために取り組みが必要となりました。

 実は建築分野での脱炭素効果は大きなものがあります。というのも、住宅からのCO2排出量は全体の16%、非住宅も併せると32%にも及び、全体のおよそ3割を建築物から排出しているということになります。そのため、電力事業や製造業に加えてこの住宅産業においても脱炭素に向けての取り組みを強化していくこととなりました。

 また、温室効果ガスの吸収源となる樹木の強化を図る上でも、木材需要の約4割を占める建築物分野において木材利用の促進を促す狙いも含まれています。

 

2.改正の大枠

 

改正の大枠をまずはお伝えします。

 改正の最も大きな柱は、「2025年度に全ての新築住宅・非住宅に建築物エネルギー消費性能基準(以下「省エネ基準」とします。)適合を義務付けた」ことです。これまでは、ビルなどの延べ床面積300㎡以上の非住宅においてのみ義務付けられていた基準が、面積規模に関係なく,住宅か非住宅かにも関係なく、すべての新築住宅・非住宅において適用されることとなりました。つまり、これまで省エネ基準適合外であった一般住宅においても、2025年度からの新築では省エネ基準に適合させなければならなくなりました。


第10条 (建築主の基準適合義務)

 建築主は、建築物の建築(エネルギー消費性能に及ぼす影響が少ないものとして政令で定める規模以下のものを除く。)をしようとするときは、当該建築物(増築又は改築をする場合にあっては、当該増築又は改築をする建築物の部分)を建築物エネルギー消費性能基準に適合させなければならない。

https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000920.html


 

3.省エネ基準とは?

断熱

では、その省エネ基準とはどのようなものなのかお伝えします。

 基準の内容は、大きく分けて2つです。一つが外皮性能基準(窓や屋根外壁などの断熱性能)で、もう一つが一次エネルギー消費量基準(冷暖房や照明等設備機器等の消費エネルギー)です。噛み砕くと、建物内の熱をどれだけ逃がさないか,もしくは夏の暑さを建物内にどれだけ伝えさせないことができるのかという窓や壁の断熱性能の基準と、冷暖房や給湯などの消費エネルギーと太陽光などの削減エネルギーとの割合の基準です。

 

詳細を確認されたい方はこちらをご覧ください。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=428M60000c00001

 

 更にわかりやすくお伝えしますと、住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、「品確法」とします。)における「断熱等級4」レベルが基準となりました。

 ちなみにこの等級は、今年2022年4月から新たに「等級5」が設けられました。そして2022年10月には更に上位の「等級6」「等級7」まで設けられる予定となっており、2025年から義務となる「等級4」レベルを最低の基準としていきたい国の意思を感じます。

 要するに、2025年度からは外壁等に高性能な断熱材を使用し、窓には複層ガラスもしくは二重サッシ等を用いることが必須となるということです。

サッシ

4.3年先の話ではない!?(2022年現在)

 

「2025年度から省エネ基準義務化」ですので「まだ3年先の話」と思われたかもしれませんが、実はそうとも言い切れないこともあります。それは、2023年4月からフラット35で省エネ基準適合を要件化すると住宅金融支援機構が公表しているからです。これまでの断熱等級2相当ではなく、等級4相当以上でなければフラット35を利用することはできなくなります。住宅購入時にフラット35の利用を検討される方は多くおりますので、来年2023年4月にはある程度等級4が実質住宅性能として必須要件になってくることでしょう。

 つまり、省エネ基準適合義務化は3年後のことではありますが、来年4月には前倒しで事実上スタートしていくと言っても過言ではないかもしれません。

 

次回は、省エネ基準に対する説明の必要性、断熱性能の高い住宅のメリットについてご紹介します。