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コラム

COLUMN

2024.11.04
法規・法律

空き家等に係る媒介報酬の見直しについて


 休日自宅周辺の住宅街を愛犬と散歩し眺めていると、思いのほか多くの空き家を散見します。一ブロックに対し1~2件くらいは有るでしょうか。

除草や剪定され管理されているような建物もあれば、草木が乱れ伸び、建物も荒廃し危険と思われるものも目につきます。

 2023年の総務省の住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は過去最多の900万戸にのぼっており30年前にくらべ倍増しており、増加の傾向が続いています。

そのような状況下で、空き家等に係る宅地建物取引業者の媒介報酬(告示)が見直され、令和6年7月1日より施行されました。

前回の私のコラムでご紹介しました「令和5年度税制改正大綱:空き家の発生を抑制するための特例措置(3,000万円特別控除)の延長・拡充について」のような施策も施行されましたが、今回は不動産の所有者ではなく、事業者への活性も考慮し策定されています。

宅地建物取引業法では、わたくしども宅建業者の報酬額に上限を定めていますが、場所や条件により利用しにくい低価格の物件について、高額物件と変わりのない、調査や販売活動を行い人件費・諸経費などコストをかけ成約にいたっても赤字となってしまうようなケースも多く有り、それらを勘案し、国交省は現状の売買取引について報酬額を見直し、市場における事業者の活性を促す目的で上記、告示を見直し施行されました。

今回は、私どもの不動産取引にかかわる、報酬額(仲介手数料)の改定についてお話しさせていただきます。

 

1.制度の概要

 

改正報酬告示より

【国交省告示第949第2の原則】

依頼者の一方から受け取ることのできる報酬額は、物件価格に応じ一定の料率を乗じて得た金額を合計した金額以内とする。

200万円以下の金額 百分の5.5

200万円を超え400万円以下の金額 百分の4.4

400万円を超える金額 百分の3.3

【低廉な空家等の売買又は交換の媒介における特例】

低廉な空家等(売買に係わる代金の額(当該売買に係る消費税相当額は含まないものとする。)又は交換に関する宅地若しくは建物の価額(当該交換に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該交換に係る宅地又は建物の価額に差があるときは、これらの価額のうちいずれか多い価額とする。)が800万円以下の金額の宅地又は建物をいう。)の売買又は交換の媒介に関して依頼者から受け取る報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。)については、宅地建物取引業者は、上記「国交省告示第949第2の原則」の規定にかかわらず、当該媒介に要する費用を勘案して、第2の原則の計算方法により算出した金額を超えて報酬を受け取る事ができる。この場合において、当該依頼者から受ける報酬の額は30万円の1.1倍(33万円)にを超えてはならない。

2.改正前

 

前回の2018年(平成30年)1月1日施工の報酬告示の改正では、売買代金が400万円以下の土地・建物の売買(交換も含まれる)で、「現地調査等特別な費用」が必要ならば「現地調査等特別な費用」を特約することで、本来の仲介手数料と特別な費用の合計で、最高400万円分の手数料に相当する18万円まで受領できました。また、この「現地調査等特別な費用」の分に関しては売主様からのみ受領出来、買主様からは3%+6万円+消費税のみでした。

 

3.要約及び留意点

 

低廉な空家等とは、物件価格800万円以下の宅地・建物のことをいいます。この「空家等」とありますが、空家である必要はなく、居住していても該当します 。

今回の改正では、売買代金800万円以下の土地・建物の売買については800万円以下の売買でも、800万円分(800万円×3%+6万+消費税3万円=33万円)の仲介手数料がもらえるようになりました。改正前は、「現地調査等特別な費用」として認められていましたが、今回の改正では「現地調査等特別な費用」が必要なくても800万円分の仲介手数料として受領できるということです。したがって、売主様及び買主様双方の仲介となる場合、800万円以下の物件の場合でも33万円×2=66万円受領できるということです。

なお、この特例に基づき報酬をいただく場合は、事前に売主様や買主様にご説明し合意いただく必要が有ります。


4.まとめ

 

本制度は、令和6年6月21日に国土交通省により策定された、「不動産業による空き家対策推進プログラム」の中の一つにあたり、現状世の中の多くの空家が実際に販売流通ルートに載っておらず、また利活用もされていないこと対し、もっと物件・所有者のニーズの表面化を図り打ちだされたものとなります。

また、「不動産業による空き家対策推進プログラム」の中には、上記「空き家等に係る媒介報酬の見直し」以外に、空家等の利活用に向けたコンサルティング業務や、空家等の管理、課題整理や手続き支援など媒介以外の関連業務に対し、仲介手数料とは別に書面などにより締結して報酬を受領できる内容も盛り込まれています。

私たちの業務エリアにおきましても、低価格帯の物件は利活用されにくい環境や条件の制約の多いものがほとんどです。

そのような空家等の物件についても、販売活動やそれに向けた調査・チラシや図面作成などの人件費やコストも、それに比べた高額物件に対してかかるものとほとんどかわりません。

そこには、ビジネスを度外視し赤字覚悟で取り組む理想や、理念抜きには活性しないという側面もあり、なるべくして所有者や業界側双方から放置されてきたという状態ともいえます。

今回の改正内容は事業者に対する支援策ですが、低価格の空家などの物件について、いままでなかなか取り合ってもらえなかったり、また効果的な提案や支援策をうけられなかった物件に対し光が当てられたかたちとも言え、手をこまねいていた相続人や所有者は、これを機に不動産の売却や利活用について再考する良い機会となります。

創業125年目を迎える弊社では、「経年進化の美学を世界へ」という企業理念を掲げています。

この意味は、存在してから永い年月をへてきたものには、個別そのものが含み備える良さがあり、資源や文化的にも存続させることに意義があり、その価値観を世に広げたいという意味合いであり、創業より永らく歩み、重要文化財などにも携わってきた歴史ある弊社の価値観です。

今回の築年数が経過した建物などの流通や、利活用の活性に向けた法改正も、前回取り上げた「令和5年度税制改正大綱:空き家の発生を抑制するための特例措置(3,000万円特別控除)の延長・拡充について」に続き、弊社の取り組むべき事業への潤滑ともなると考えております。

弊社では、空家等の物件対策や、相続により不動産を所有された方、所有不動産の利活用についてご検討されている方のご相談も受け賜っており、お役に立てれば幸いです。


参照 出典 

国土交通省 空き家等に係る媒介報酬規制の見直し

 プレゼンテーションタイトル

国土交通省 不動産業による空き家対策推進プログラムについて

https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk3_000001_00066.html

総務省 2023年住宅・土地統計調査

統計局ホームページ/令和5年住宅・土地統計調査 調査の結果