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コラム

COLUMN

2023.07.04
法規・法律

民法233条改正 相隣関係・越境した枝の処理に関するルール変更について


建物の点検で訪問の際に良く相談を受けることの一つに、隣地からの竹木の枝の越境による落葉が屋根に積もってスレート瓦などの劣化が進むことや、雨樋が詰まって雨水が流れない、またその影響で軒樋の雨水が継続的に溢れてしまい、軒や外壁が傷み、雨漏れの原因につながるという問題が有ります。

隣地が居住中のお家であれば、お願いして切除してもらい解決しやすいですが、依頼拒否されたり、空き家であったり、また所有者がわからない土地の場合は、勝手に隣地に入り処理することも出来ず、大切なマイホームも劣化が進行してしまいます。

屋根に上がり、自分で雨樋の清掃を行うことは危険で難しく、業者に依頼し費用をかけて数年おきに清掃する事も出費がかさんでいきます。

このような問題の改善の為に民法が改正され令和5年4月1日施行されました。

ご自身の住宅環境の良好な維持管理において役立つ知識ですので、ご参考になれば幸いです。

.概要

 

令和3年4月28日公布、令和5年4月1日施行

越境した枝の切除に関するルールの変更について

※越境とは、お隣の敷地から自分の敷地に境界を超えて、枝葉などが存在している状況を言います。

(改正前の問題点は)

・竹木の所有者に切除をしてもらう必要があるが、所有者が切除しない場合は訴えを提起し切除を命ずる判決を得て強制執行の手続きをとるほかないが、竹木の枝が越境する都度、常に訴えを提起しなければならないとすると、救済を受けるための手続きが過重である。

 強制執行とは、裁判所などの公的機関を通してその判決をもとに、強制的に越境した枝を切除することです。

・竹木が共有されている場合に、竹木の共有者が越境した枝を切除しようとしても、基本的には共有者全員の同意が必要であり、円滑な管理が難しい。

(改正後は)

一定の場合には訴訟提起なしに枝を切除できるようになりました。訴訟提起とは、裁判所に訴えをおこして、越境した枝を切除出来るよう公に認めてもらうことで、労力や時間もとてもかかって大変でしたが、それがなくなりました。

共有の竹木において、他の共有者の同意なく共有者単独で切除できることとなりました。

つまり、共有者のうちの誰か一人の判断のみで切除できるようになったということです。

越境した根については、自らその根を切り取ることができ、ルールに変更はありません。

 

.改正後民法233条の条文です

 

1       土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

2       前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。

3       第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者はその枝を切り取ることができる。

・竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。

・竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

・急迫の事情があるとき。

・隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。 

が、条文となっています。

 

 

.訴訟提起なしに枝を切除できる場合のルール

 

    急迫の事情が有る場合は、切除可能

  ※急迫とはさしせまった事情により、ことを早急にすすめないといけない状況をいいます。

    急迫の事情はない

 1 竹木の所有者が不明、又は所有者はわかるものの行方不明の場合は切除可能とする。

     2 竹木の所有者は判明している

   その場合は、まず所有者に切除の依頼をする事が必要で、それにもかかわらず相当期間内に切除しないときは、切除 可能とする。つまり、お隣の方に竹木の切除をお願いし2週間たっても切ってくれない場合は、越境した枝を切ってもかまわないということになります。 

急迫性について、想定される場面として

国や地方公共団体などが、道路に越境した枝によって信号機が見えずらく、交通事故を誘発するおそれがある場合、急迫性がありとして、直ちに切除できることとしています。

一方、住宅などで隣地より越境した枝により住宅の性能に支障をきたし、損傷などの被害を受けるおそれがある場合などは、急迫性は認められないため、まずは竹木所有者にコンタクトを試みる必要があります。そして、竹木所有者が判明しており、かつ所在が分かるのであれば切除するよう催告する必要が有ります。

 

.急迫性がない場合の具体的対応について

 

    土地所有者及びその所在地を調べる

隣地が、居住中のお家であれば、直接お声がけし依頼する。

そして、そのお願いを申し出た日が催告日となり、催告期間は2週間程度と考えて良いと思われます。

また、隣地が空き家の敷地や、人が住んでいない林のような木が生えている土地などの場合は、竹木の生えている土地の登記を法務局にて取得し、土地所有者を調べ登記記載所有者住所を調べます。

 

    内容証明郵便通知を発送する

土地所有者が判明したら、内容証明郵便などによる方法で切除をするよう依頼出来ます。

この場合も催告期間は2週間程度設ければ良いと思われます。

 内容証明郵便とは、一般書留郵便物の内容文書について証明するサービスです。郵便局が、差し出す文書の内容を保管することで、いつ、どのような内容の文書が、誰から誰宛に差し出されたかを証明することが出来ます。

    枝の切除

切除できる枝の範囲は越境した部分のみとなります。

切除するのに必要であれば隣地を使用することも出来ます。

尚、この際の切除費用は請求可能です。

 

④隣地が共有地の場合

竹木の所有者が共有の場合には共有者の一人を説得して切除してもらう事が可能です。

説得出来ない場合であっても、共有者全員ではなく、共有者の一人を説得して依頼すれば可能であることになりました。

(参考)

「竹木の共有者は、単独で枝を切除することができる」(改正後民法233条2項)

 

 

5.まとめ

 

   今回のテーマ選定には、自身の不動産業務における数年前の出来事も発端です。

 数年前、不動産仲介業務で、裏が崖上の林となっている中古住宅の売却の依頼を受けました。隣地の大木が、敷地境界より空中で大きく越境し、大きな枝が屋根を覆いかぶさる状況となっており、オーナー様は毎年苦労し屋根の上の、軒樋や谷樋に堆積した枯れ葉や、枯れ枝を苦労して除去されていました。

 15年ほど前に一度業者が地主からの依頼で裏の木の越境している枝払いを実施した、との事ですが、その後、その他後先、音沙汰は全く無かったとのことです。

 この状態のままでの売却は大きなリスクとなり、不動産価格も目減りします。

 法務局で謄本より所有者を確認したところ10数名の共同所有となっており、遠方の所有者や所在不明の方もおられ現状の対策や、今後の取り決めなどに必要な共有者全員の承諾をいただくことは出来ませんでした。この物件の売却は出来ましたが、査定価格や購入価格はそのリスク要因も一つとし評価されます。

 もし、今回の民法改正によるルール変更がなされた後であれば、その対策が出来、十分な評価を得ることが出来た可能性はあります。

 あまり表面的には理解されませんが、自身のこのような経験より、広義の資産価値の評価にも反映する可能性も感じました。

 私たちの多くが暮らす市街地のほとんどは、その土地で定められた建築可能な広さの制限一杯に住宅が建てられ、隣地と建物も近接しています。また、住宅は庭木が植栽をされている世帯も多く、このような中長期的な住環境の維持管理の問題は、多くの世帯で対峙する可能性もあります。

 今回の民法改正による「越境した枝の処理に関するルール変更」はその問題解消に役立つと思われます。

 今回の情報が皆さまのよりよい住環境維持の一助になれば幸いです。