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いまさら聞けない「耐震」「制震」「免震」の違い どれが良いの!?
住宅業界の中で良く出てくる用語に「耐震」「制震」「免震」の用語があります。”耐震”等級、”免震”構造、”制震”システムetc. どれも「地震対策」に関係する言葉で、住宅にとって最重要な基本性能「安心、安全」に関わる機能を表します。最近では住宅を選ぶ際の地震対策・防災対策が重要な選択要素となっており、どこの住宅メーカーのパンフでもこの3つの言葉は良く出てきます。
今回はこの3つの言葉の概念、メリット、デメリットについて、大まかな概要を解説していきます。
(なお今回は理解しやすいように木造住宅を多く例にとって説明します)
目次
■1:耐震・制震・免震の違い
「耐震」「制震」「免震」それぞれの機能性の違いを理解するには漢字を分解して考えるのが一番手っ取り早いです。
まず全てに含まれる「震」の文字。「振」でなく「震」なのは、地震に対する対策である事を意味します。そして、その前についている「耐」「制」「免」の文字は「地震に対してどのように対抗するか」と読み解くと理解しやすくなります。
1-1:「耐震」そのメリット・デメリット
震動に対して「耐」える事(構造)を言います。
全ての建築物において基本的な構造になります。木造在来工法であれば、壁の中の筋交いや合板などで柱が倒れない様に支えたり、壁式枠組工法であれば合板壁パネルを六面体に組むことで形の変形を防いだりして揺れに耐える構造を言います。鉄骨造や鉄筋コンクリート造も基本的にはこれに含まれます。
メリット:メリットと言うより全てにおいて基本的な構造である事から、設計上の数値評価や比較がしやすく建築基準や性能評価などに利用しやすいのがメリットとも言えます。小規模建築では耐震構造のみでも効果が得られやすい事、基本的な構造故に比較的特殊な工法が必要ない事もメリットです。
デメリット:耐震性を高める=固く(硬く)する構造は、反面「脆い」構造となりやすい事、例えば高層建築の場合(硬くし過ぎると折れやすくなる)などが想像しやすいです。また限界を超えた時に壊れる時間が早い事もデメリットと言えます。
1-2:「制震」そのメリット・デメリット
震動を抑えて「制」御する事を言います。
制震機器(機構)を用いる事で建物に伝わった震動を小さくして建物への影響を軽減させる方法です。イメージ的にはブランコや車のダンパーを想像して下さい。大きい揺れに対して反対向きの力を加えたりブレーキをかけて(制動)揺れを制御する工法です。最近は多くの工法が開発・普及されており、住宅にはオイルダンパーやゴム、バネなどを用いた物が主流です。大規模建築でも様々な工法が採用されてきています。
メリット:本震で損傷を受けた後の余震など何度も繰り返す地震にも効果が期待できる事、機器によっては小さい揺れから減衰効果を発揮出来るものもあり木材等の破壊軽減にも期待できます。また免震と比較して導入費用やコストも低く、作業も制震機器を設置するだけなので簡便に対地震性能が向上できる点が最大のメリットと言えます。
デメリット:耐震と比べて効果(揺れの軽減)を数値化する事が難しい事、使用材(ダンパーやゴム、バネ等)や機構の性質によって性能が左右される事もあり評価や比較がしずらい事がデメリットと言えます。
1-3:「免震」そのメリット・デメリット
震動を伝えず「免」れる事を言います。
専用工法などを用いて地面からの震動を建物に伝えない事で被害を防ぐ方法です。住宅などの小規模建築では建物を支える基礎に機構を設置して滑らせたり空気圧を利用して浮かせるなど、建物と地面の接点を無くす工法が採用されています。大規模建築でも導入されている建物が多くなってきています。
メリット:最大の利点はその効果です。「震動を免れる」事は「地震を無しにする」と等しく、建物への被害も人的被害も最小限に抑える事が可能です。現在考えうる地震対策としての最大の効果がそのメリットです。
デメリット:導入には大規模な免震装置(機構)の設置が必要でその費用やコストが高い事がデメリットと言えます。また工法にもよりますが地盤の強度や状況を選ぶ場合があったり(傾斜に弱い)、建物が動く前提の為配管などに特別な仕様が必要になる事もデメリットになります。
2:まとめ ~結局どれが良いのか?~
ここまで3つの工法の違いを解説しました。結局のところ工法によって其々のメリット・デメリットがあります。例えば新築の際、「とにかく地震での被害を最小限にしたい」とすれば免震が最適ですし、「予算をなるべく抑えて+αの地震対策を」考える際は制震が、既存の建物を耐震改修する際ならば基本性能の向上と費用対効果から耐震が‥と、「どれが一番良いのか?」 はケースでに合った選択、検討をするのが重要です。