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コラム

COLUMN

2022.03.18
構造

基礎について


1.基礎とは?

 

『基礎』、この言葉は「基礎知識」や「基礎がしっかりとしている」などと、日常的に良く使われる馴染みの深い言葉です。一方、建築においては建物の最下部に位置するコンクリートの部分を指して『基礎』と呼び、日常会話のそれとは異なり具体的な構造部材を指します。建築における基礎の役割は建物の荷重を支持し地盤に伝えるもので、非常に重要なはたらきをしています。まさに、建物を支える『基礎』と言えるものです。

 

2.地業(じぎょう・ちぎょう)

地業

基礎について詳しくお伝えする前に、コンクリート基礎を施工する前におこなう『地業』についてお伝えします。地業とは、基礎から伝えられる荷重を地盤に直接伝える役割を担う工事です。完成後は地面に完全に埋まってしまう部分のため馴染みは薄いかもしれませんが、建物を安全に支えるために地盤を強固にする工事ですので非常に重要です。具体的には、地縄張りから始まり地面を掘削して根切りした所に砕石や割栗石を敷き詰め転圧して締め固めていきます。そこへ地面からの湿気を防ぐ防湿シートを敷いた上に捨てコンクリートを流していきます。これでようやくコンクリート基礎を造るための準備が整いました。これら一連の工程を『地業』と呼んでいます。
なお、この地業をしたその上に基礎や更には建物などを造っていきますので、ここでのミスや施工不良はもう取り返しがつきません。重機などで地面を掘り返す比較的大掛かりな工事ではありますが、非常に精度も要求される繊細な工程でもあります。

 

3.基礎の役割と種類

 

3-1.基礎の役割

 

地業をおこなった後にいよいよ基礎を造っていきますが、改めてその役割について整理していきます。

基礎

 基礎の役割の一つは前述のとおり建物の重さなどの鉛直荷重を支えることですが、それに加え地震や台風などの際にかかる水平荷重も地盤に伝える役割を果たしています。また、地盤の支持力に合わせて強固にした基礎とすることで、不同沈下(=一部が沈み込み建物が傾くこと)を防ぐことも大きな役割の一つです。不同沈下を起こし傾いてしまった住宅へ何度か伺ったことがありますが、平衡感覚を失われおかしな感覚になります。その中で暮らして行かなければならないお住まいの方を思うと大変お気の毒に感じました。これを後から直すことは非常に困難ですので、基礎は適切に選択し正確に工事する必要があります。

 では、次はその基礎の種類についてお伝えします。

 

3-2.基礎の種類①

 

 ひとことで基礎と言っても大きく分けると2つの種類に分かれます。軟弱な地盤に採用されることの多い「杭基礎」と、比較的安定した地盤に採用されることの多い「直接基礎」です。 

 まず杭基礎についてです。地盤に杭を打ち込み建物を支える杭基礎は「支持杭」と「摩擦杭」に大別されます。支持杭は固い地盤に到達させて支える杭であることに対して、摩擦杭は強固な地盤まで到達できない場合に採用し、杭と土壌との摩擦力で建物を支える杭です。軟弱な地盤の場合には、このような杭基礎を打ち込んだり地盤改良をおこなったりして支持基盤を整えた上に直接基礎を造っていくことが一般的です。

 次に直接基礎です。直接基礎は大きく「ベタ基礎」と「布基礎」とに分かれます。べた基礎は、建物下部全面をコンクリートの底盤で支える立ち上がり部と一体化された基礎で、多少弱い地盤に対しても採用できます。一方、布基礎はコンクリート底盤でおおわれている訳ではないため、床下土壌がむき出しとなっているのが特徴です。ベタ基礎のように底面全体で荷重を支える訳ではありませんので、強固な地盤でないと不同沈下が置きやすくなってしまいます。また、床下の土壌からの湿気が上がりやすく、湿気対策は必須と言えます。

 その対策として、布基礎の床下にあらかじめ防湿コンクリートを打っておくことが効果的です。建物建築後に対策をするのであれば、床下換気扇や床下調湿マットなどで対策をおこなうことができます。

 床下の湿気については、床下全面コンクリートで覆われたベタ基礎であっても油断はできません。そもそも高温多湿な日本の気候風土であることは基礎構造に寄らずかわりません。また、近年の高気密高断熱化により床下結露の発生など床下環境の多湿化は問題となっていますので、ベタ基礎だから湿気は大丈夫とも言えなくなっています。今回は基礎についてですので、湿気や床下環境についての話は、また別の機会により詳しくお伝えできればと思います。

基礎

3-3.基礎の種類②

 

 その他直接基礎の種類として「独立基礎」「礎石(そせき)」と言われるものがあります。これは一本一本の柱ごとにその下部にコンクリート基礎,もしくは石を設置する基礎です。多くは神社仏閣など歴史的建造物で見られるもので、一般住宅ではほとんど見かけません。この「独立基礎」「礎石」の建物は、それ以外の基礎と異なりうわものの建物と緊結に一体化されている訳ではありません。そのため、地震などの際には、揺れと共に建物がずれて地震力を逃がしてくれることも期待できます。この基礎は、ある種の免震構造であると言えるかもしれません。

 ちなみに、よくビルやマンションの外壁に「定礎(ていそ)」という文字が刻まれている事がありますが、これは建物造りのはじめに礎石を据えることから転じたものです。更にちなみに、この定礎の中には建築図面などが入っている箱が埋め込まれています。

 

4.まとめ

  建築における基礎はまさに建物の『基礎』。常に日陰に(地面に)隠れた存在ですが、家を安全に支えてくれている無くてはならない縁の下の力持ちです。陰ながらずっと支えてくれているかけがえのない存在、皆さんの周りにもそんな『基礎』のような方がいるでしょうか?住宅の基礎もそのような支えてくれている人にも、時には感謝をしたいものですね。